自分でつくるより、誰かにつくってもらうほうが美味しいものがある、と時々思う。たとえばオムレツとか、カツレツとか、スパゲッティナポリタンとか。つまり、ちょっとだけ日常からはみだして、でも親しげな一皿。たとえば同じ卵料理でも、卵焼きは自分でつくる。(そういえば、実家の毎日の献立の中にも、「オムレツ」は、なかったかもしれない。) ホットケーキも、わたしにとってはそういう食べ物だ。好きだから、家でもたまに焼くのだけれど、ときどき誰かが焼いてくれたのを食べたくなる。誰かが入れてくれたコーヒー、誰かが作ってくれる食事、誰かが絞ってくれるオレンジジュース。どれも自分でつくるものより、ほんの少しだけほんのり甘い。 先日ふと、ホットケーキが食べたくなったので、電車に乗って食べに行った。近所で評判のホットケーキ。聞けば随分老舗らしい。 ビルの中の小さな喫茶店は、入るなり甘い香りがしていた。注文を受けてから焼くそうなので、待つこと十数分。やっとありついたホットケーキは、ふかふかの生地がかりっと香ばしく、ナイフを入れると溶けたバターがじゅっと沁みて、小麦粉とバターの香りがふわふわと鼻先を漂い、大変美味しかった。 ふと顔をあげると、お店の中のお客さんは皆一様ににこにことホットケーキを食べていて、ホットケーキってこんなに幸せな食べ物だったんだな、と、ぼんやり思った。  |