
ムジャキフーズで起業体験をしようと思ったら、またA契約を結ぶのがスタンダードなやり方ですが、いきなりB契約を申請してくれても構いません。それだけの技術があるならばゴーサインを出します。たとえば、以前うちに在籍した経験があり、退職後に改めて沖縄料理店をB契約で依頼してきた人もいます。分厚い企画書と人材を自分で手配して、審査と取締役会でも承認され、いきなり業務委託契約を結びました。また、広尾のてんぷら屋は、お台場の日航ホテルの和食料理長をやっていた人が、資金も人材もないのでトラスト方式でやりたいと依頼してきたものです。腕一本でやりたいというので、弊社でお店をつくり、そこに職人と配膳の女性を手配して、彼がやりたいメニューまでセットしました。
社員にならなくても、いきなりA契約やB契約を結ぶことができます。ただ、実績や経歴を審査させてもらいます。信頼関係をつくり上げられるかどうかをジャッジするのです。ですから、お金を用意してくれば開業できるというわけではありません。そんなことよりもトラスト(=信頼関係)がなければいけないのです。それから、どんなに困って辛い思いをしても、逃げないこと、裏切らないことが大事です。困ったなら困った、儲かったら儲かったと言ってくれればいい。堂々と意見を言い合える関係でありたいのです。それがうまくいくポイントではないでしょうか。
やはり、そういう関係を築ける人は商売も上手ですね。人当たりがよくて、人付き合いもうまいのです。親戚中をまわって1000万円を集め、商売をはじめたら、すぐに失敗したという例はたくさんあります。そこには、心というものが通っていないのです。ただ1000万円を投資して、将来的には2000万円、2億円になるだろうと安易な考えで起業すると失敗するのです。何らかのポリシーや使命感を持った上で、最低限の商売のセンスがあったら失敗することはないのです。飲食の商売は、人と人の商売なので、お客様に認められればつぶれることはないはずです。
飲食の原価率が30%程度という事実は、一般にもかなり知られています。家で食べれば30%の値段で食べられるのに、なぜわざわざお店に行って100%の値段で食べなければいけないのか。それは、飲食店にいる人間、その仕事ぶりやテクニックにお金を払っているとお客様が理解してくれているからです。ということは、30%のものを100%でいいと言ってくれているお客様を裏切ることさえしなければ、原価率が低いのですから、必ずやっていけるはずです。やっていけないのは、何かおかしなことをやってしまっているからです。お客様の思いや期待を裏切り、認めてもらえていないのが原因だと思います。
ある大企業の社長さんが、「 これだけ利益が上がりました 」 と株主総会で自慢気に報告したとします。その裏で、メディアの取材に対して 「 骨身を削ってお客様のために働いています 」 と語っていたら、それは自己矛盾になるのではないでしょうか。会社が儲かるということは、お客様から利益を取っているということです。お客様のためにと言うのであれば、原価率30%のものを30%で売るべきです。身を粉にして働くなら給料は取らなくていいのです。会社を経営する側と、お客様に喜んでもらうために現場で働く側が向かい合って真剣勝負をしないと、いい店舗はできないのではないでしょうか。ムジャキフーズはその仕掛けをつくろうとしているのです。
飲食の現場で、お客様に喜ばれるような仕事をしたいと思えなくなった方は、商売を上手くできないし、僕らとも上手くやっていけないと思います。そういう魂のない飲食店も実際にあります。たとえば、食材が床に落ちた場合、拾ってそのまま使ってしまいます。腐っていそうな食材でも、使わないと怒られるからと使ってしまう。それが食中毒や食品偽装の問題につながっていくのです。そこには、お客様に喜んでもらいたいという気持ちが皆無なのです。少しでもあったら、そんなことは絶対にできないはずです。飲食業に携わるものとして許されることではありません。会社は利益を出すために、店舗はお客様のために、そういう気持ちでガチンコ勝負をすることが、いい店づくりにつながっていくと考えています。
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