ボストンマーケットの大成功によって、黙っていなかったのが食品スーパー業界である。
それまで脇役に過ぎなかった惣菜コーナーに主役の座を与えた。食品スーパー業界のこの戦略を、HMRに対抗してMS(ミール・ソリューション:食事の問題解決)と呼ぶ。HMRもMSも「中食」だが、起点は異なる。ボストンマーケットが創り上げ、スーパーがさらに自分達の強みを活かした戦略によって、あらゆる食シーンでアメリカ食文化の中に「中食」が定着し始めた。このフォーマットをさらに磨き上げたのが、イーチーズである。
1996年、テキサス州ダラスにイーチーズは生れた。レストランコンセプト作りの天才シェフで、イタリア人のフィル・ロマーノ氏によって創られたこのフォーマットは、“感動”を創出した。店内に入った瞬間、お客様は大規模なキッチンの中に迷い込んだ錯覚を覚える。生地から手作りされる香り高いパンの製造過程が分かり、目の前でプロの調理人によって様々な料理が生み出され、自分の好みでそれらを買うことができる。決して出来合いの冷凍や缶詰等の既成食材で調理されていないことが目の前で実証されているのである。同種のフォーマットは急速にアメリカ国内へと広まり、時間はないが家族とのコミュニケーションを大切にしたい、そして、少しでも質の良いものを味わいたい、といった顧客を中心に「中食」文化が根付いてきた。その反面、HMRを提案したボストンマーケットは1998年会社更生法の適用を受け、翌年マクドナルドに買収されてしまうなど、外食文化への影響は大きかった。
このあたりの外食事情は今の日本の状況と酷似している。アメリカ人の食文化に多大な貢献をしてきた外食産業が、その役割を果たしきれなくなっていた。さらに、アメリカの外食の中心であったFFに対して、「健康に悪い」「肥満の原因」「成人病のもと」「ジャンクフード」といった非難が集中してくる。この非難は、ベビーブーマー達から発せられたものである。
しかし、2000年を目前とした時代、低迷を続けていたアメリカ外食産業に、現状打破のひとつのきっかけが生れる。大手FF企業から「次の一手」として、 “ファストカジュアル”が提案されるのである。 |