HOME > 特集記事一覧 > シリーズ 食の危機を乗越える ~外食産業が進む道を考える~ 食材原価高騰の時代を活きるVol.1 第3回 厳しい環境下こそ前向きの努力を -リストランテ アルポルト 片岡護シェフ

シリーズ 食の危機を乗越える ~外食産業が進む道を考える~

原油の高騰、食料の高騰そして人件費の高騰と外食産業を取り巻く経済環境は日々厳しさを増している。更に乳製品、菓子などの賞味期限切れ食品、牛肉、鶏肉、うなぎなどの生産地偽装食材などといった消費者の期待を裏切る不祥事が社会問題化するなど飲食業従事者に逆風は吹き止まない。
外食産業の活性化のため、外食ドットビズは関係者の方々の考えを中心に、この様な厳しい環境下で飲食業に携わる方々に少しでもお役に立つ情報を発信していく事を目的に 『 シリーズ 食の危機を乗越える 』 と題し、不定期に掲載していく。

食材原価高騰のとき時代を活きるVol.1

小麦、大豆などの穀物をはじめとした食料価格の上昇が日本の台所を直撃している。特に穀物の価格の推移をみると、2年前に比べてとうもろこしや大豆は約2倍、小麦にいたっては何と約3倍にまで高騰をしている。今後の価格の見通しでもここ近年の記録的な高値よりはやや下がるものの、高止まりの状況は続くと見られている。
また、食料価格が高騰している理由には、新興国の経済成長や人口増加による消費増のほか、過去の食料危機の局面にはなかった原油価格高騰との連動や、気候変動、バイオ燃料の需要増、穀物市場への投機マネーの流入など複合的な要因が考えられている。
こういった状況を鑑み、本シリーズの最初として、食材原価高騰の代表格と目される小麦粉について、製粉大手の日清製粉グループの基幹企業である 日清フーズ株式会社 の協力で、小麦粉を利用した食材を主に使っているレストランの経営者であり、著名なシェフの方々のお話をお聞きしていきたい。

第3回 厳しい環境下こそ前向きの努力を  -リストランテ アルポルト 片岡護シェフ-

RISTORANTE “ Al Porto “ (リストランテ アルポルト) 』。イタリア語で 「 港にて 」 を意味するこの店名には、オーナーシェフである片岡護シェフの気持ちが込められている。そう、港は、出港の場であり、帰港の場である。人生の出発を祝う時に、そして疲れた羽を休ませる時に立寄って頂けるお店でありたいとの願いが込められている。

片岡護シェフは、当初から料理人を目指していたわけではなかった。都立田園調布高校時代に美術部に所属し、大学も美術大学を志望するも残念ながら不合格であった。失意の中、母親の仕事関係で付合いのあった外交官がイタリア総領事として赴任することになりコックとして帯同を勧められたのが料理人の世界に入るきっかけであった。

厳しい環境下こそ前向きの努力を  -リストランテ アルポルト 片岡護シェフ-帯同までの3ヶ月間、東京・築地の日本料理店 「 つきぢ田村 」 で修行をした後にイタリア・ミラノに渡った。

イタリアにコックとして渡ることになってから、片岡シェフは本場のイタリア料理を勉強し、帰国後には美味しいパスタの店を開店したいと考えていた。

しかし、ミラノの日本総領事館で作ることになった料理は、日本料理が中心であった。その中で、良い食材の買い方、日本とイタリアの食文化の違い、ヘルシーを意識したイタリア料理といった料理に関することからヨーロッパ文化の常識や接客マナーなど多くのことを学んだ。また忙しい仕事の合間に時間を作っては足繁くレストランに通いイタリア料理の勉強に勤しんだ。

5年間のミラノの日本総領事館での修行終え帰国した。帰国後は 「 小川軒 」 での修行、そして 「 マリーエ 」 を経て、1983年、西麻布に 「 アルポルト 」 をオープンした。

「 アルポルト 」 を始めるにあたって、片岡シェフは本場イタリアの料理をそのまま日本で再現するのではなく、日本人の嗜好に合わせた店作りを行った。

その一つが当時マスコミでも評判になった 「 懐石風小皿料理 」 である。イタリア料理の醍醐味は、一つの物をバーンとダイナミックに食べるところにあるが、色々な料理を小皿に取り分けて食べることで料理を楽しめ、日本人の嗜好に合致していると考え作り出されたものなのである。

厳しい環境下こそ前向きの努力を  -リストランテ アルポルト 片岡護シェフ-また、和の素材を多くイタリア料理に取り入れてもいる。それは、日本の食材はヨーロッパには無い良さがたくさんあるとの考えからであり、野菜を中心に季節ごとに美味しい食材が色々あるからである。

その食材に関して、今非常に高騰している。オーナーシェフとしてどの様に対応されているのか、片岡シェフにお伺いした。

 

 

- 様々な食材の価格が高騰していますが、どの様に対応されていますか?

そうですね、確かに食材価格は上昇していますが、現在の環境を考えたら、これはやむを得ないかなと考えています。それじゃ値上げをすれば良いのかというと、そういうことではないと考えています。

まずは、今まで以上に無駄を無くすことについて考える必要があると考えています。例えば、食材のロスは無いのかとかシフト管理は適正であるのかということを見直すことですね。このように無駄をなくすことで食材価格の上昇分を補えるのではないかと考えています。

 

- なるほど、無駄をなくす取り組みの他に何かございますか?

イタリア料理 アルポルトお客様に対して、新たな価値をご提供するということも考えております。付加価値を高める工夫も必要でしょうね。例えば、女性のお客様が多いお店では、“ 健康 ” “ アンチエイジング ” や “ デトックス ” と言った付加価値を持つ新しいメニューをご提案する等と言ったことですね。この様にそのお店、そのお店に合った付加価値の高いメニューをご提供できれば、仮に従来よりもメニューの価格を上げざるを得ないことになったとしても、お客様の支持は得られるのではないかと考えています。

この付加価値の提案は、メニューの見せ方によってもできますよね。美味しそうに見える食器を使ったり、美味しそうに見える盛り付け方を考えていったりと言うことです。言い換えれば、プレゼンテーションの仕方についてあらためて考える機会になるのではないでしょうか。

 

- 最後に、今後のお考えについてお聞かせください。

イタリア料理 アルポルト確かに経営環境は厳しくなっています。しかし、厳しい経営環境だからこそ、チャンスがあると考えてみたいと思います。本当の意味での競争が求めるようになったのではないでしょうか。当店でも一からやり直しと言う気持ちで取り組んで行きたいと考えています。

そして、先ほど申上げたように、工夫すべき点はまだまだたくさんあると思います。「 美味しかったよ。また来るよ 」 とお客様に言って頂けるように前向きに努力を重ねて行きたいと考えています。

 


 

※ インタビュー部分は、株式会社外食産業新聞社のインタビューを外食ドットビズが編集いたしました。

 

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「リストランテ アルポルト」オーナーシェフ 片岡 護氏

片岡 護

「 リストランテ アルポルト 」 オーナーシェフ
1948年東京都出身。
都立田園調布高等学校卒業後、駐ミラノ日本総領事のコックとしてイタリアへ渡る。
5年間の修業の後、帰国後 「 小川軒 」 「 マリーエ 」 を経て1983年、東京・西麻布に 「 リストランテ アルポルト 」 をオープン。

日本におけるイタリア料理界の草分け的存在であり、イタリア料理のアドバイザーとしてテレビや雑誌等でも広く活躍中。「 和の素材でイタリアン 」(講談社)など著書も多数出版している。

文: 齋藤栄紀

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