|

|

できの良い生徒 :
坂尻高志 |
 |

講師 :
黒部善得社長 |

できの悪い生徒 :
前城幸代 |
|
【黒部社長】 さて、今までは、どちらかというと従業員の方々にスポットライトをあててみてきましたが、起業を考えられている方もいらっしゃるでしょうから、経営者に視点を向けてみましょう。
前城さんが飲食店を始めることにしました。成功のためにはこの業界の事をよく知っている人を雇いたいと思いましたが、最初から社員を雇うほどの余力はありません。そこで坂尻さんをアルバイトとして雇う事にしました。この場合、最初から労災保険に加入する必要があるでしょうか。
【前城】 労災には、正社員もアルバイトも関係ないので、労災に加入する必要があると思いま~す。
【坂尻】 おっ。わかってきたじゃない。
【前城】 あったり前じゃないですか!勘ですけど・・・
【坂尻】 ・・・。やっぱり・・・
【黒部社長】 その通り、加入の必要がありますね。原則として、労働者を一人でも使用する事業は、労災保険の強制適用事業とされます。事業所を設立してから、 50日以内に労働基準監督署に申請を行わなければいけませんので、気をつけてください。しかも、保険料は、全額事業者負担となります。
では、坂尻さんが飲食店を始めることにしました。資金に余裕があるので、前城さんを正社員として雇う事にしました。しかも、「 君は非常に優秀だから専務取締役として迎えよう 」 と言ってくれました。しかし、開店3日目に、油で汚れた床で足を滑らせて転んでしまいました。しかも運が悪い事に運動音痴の前城さんは手のつき方が悪く右腕を折ってしまい、3ヶ月間働けなくなってしまいました。
さて、この場合どうなるのでしょうか。
【前城】 開店3日目ということは、仮に労災保険の申請をまだしていなくても50日以内だから労災の適用になりますよね。じゃ、労災保険を使えば良いのではないですか。
【黒部社長】 残念ですが、労災は適用できないのですよ。前城専務。
【前城】 な、何でなんですか
【黒部社長】 労災保険というのは、あくまでも労働者のための保険なのですよ。役員は、労働者ではないのです。労働者は、会社と雇用契約を結びますが、役員は雇用契約では無く、委任契約になるのです。
だから、この場合、前城 “専務” は、病院に行っても保険が利かないどころか、3ヶ月無給になってしまうのです。坂尻さんの甘い一言に乗ってしまった結果ですね(笑)。
【前城】 坂尻さんって、ひどいっ!乙女の心を弄ぶなんって!もしかしたらそんな人じゃないかって思っていたけど・・・。
【坂尻】 おいおい。架空の話でそこまで言うか? しかも、ドサクサに紛れて “乙女” だなんて。 ところで、黒部さん。前々から気になっていたんだけど、この場合、仕事中の事故だから当然健康保険も使えないですよね。じゃあどうしたらいいのですか。
【黒部社長】 これが、“ 医療保険の空白ゾーン ” と言われているところですね。労災も使えなければ、健康保険も使えない。例えば、自宅から職場に向う途中で事故に遭って怪我をしてしまった場合にも労災は適用されません。そもそも役員には通勤という概念が無いのです。それだけではなく勤務時間という概念もありません。
坂尻さんの質問に対する答えですが、労災には特別加入制度というものがあります。これに入っていれば、役員でも労災保険を使う事ができます。それ以外には民間の役員向け保険などに入る必要があるでしょう。
【坂尻】 飲食業の場合、役員といえども店のサポートに行ったり、テストキッチンの厨房に入ったりすることが多々ありますよね。“ 医療保険の空白ゾーン ” があるのであれば、よくよく気をつけないといけないと言うことですね。
【黒部社長】 その通りですね。労災保険は、飲食業にとって非常に身近な存在なのですが、結構知られていない事が多いですからね。
【坂尻】 わかったかい?前城君
【前城】 よーく、わかりました。坂尻さんの会社に入っちゃいけないということが…。

【坂尻】 ・・・。そういうことじゃなく・・・。
【黒部社長】 まぁまぁ、お二人とも 。次回は、そろそろまとめに入りたいと思います… 。
-本日の講義のポイント- |
■
労災保険の保険料は、全額事業者負担である。
■
原則として役員には労災保険は適用されない。
■
役員には、労災保険も健康保険も適用されない“医療保険の空白ゾーン”がある。
■
役員向けには、労災の特別加入制度か民間保険の役員向け保険がある。
◎
原則として労働者が一人でもいると労災保険に加入する義務がある!
|
|
|