HOME > 集中連載記事一覧 > 米国外食店舗視察~シカゴ・ニューヨーク発 アメリカの非日常・楽しませるという回答~

■第 6 回

トライベッカのテーマパーク NINJA NEW YORK

 シカゴ・ニューヨークで行った視察レポート。アメリカフードビジネスの潮流をさわりだけ。
 

視察ツアー3日目、NRAの会期を終えて、シカゴからニューヨークへ移動した。

 慣れもあると思うが、シカゴから移動して来たせいか、町の雰囲気ががらりと変わるように感じる。
 メディアでは見慣れた気になっている風景なのであるが、実際にかの地に降り立つと、なにか気を許せない空気というか、いいようも無い緊張感につつまれる。



 ビビッてもしょうが無いので、ホテルで荷物を降ろし、いざ、「NINJA NEWYORK」へ。

 我々が泊まったホテルはBrordwayの近く、42nd st沿い。室内が禁煙で面食らったが・・。


街は猥雑な雰囲気。ホテルの裏がブロードウェイで、タイムズスクエアのすぐ近く。



 赤阪にもお店がある「NINJA」は日本企業の出店(フランチャイズらしい)であり、ニューヨーク進出の際の苦労話も多いと聞く。今回はOFSC研究会の方々も同行の公式視察ということで、日本人のマネージャーの方に店舗の案内をしていただけるとのこと。


 この日の移動はタクシー。目的地はHudson Stと Chambers Stの交差点あたり。まったく覚えていないが、私が泊まったホテルからは7thアベニューからちょうど一直線に南下してHudson Stに合流したと思われる。

 どちらかというとひとけが少ないように思えたが、ここはTriangle below Canal St.を略してTribecaと呼ばれるあたりで、元は倉庫街。おしゃれなCafeやダイニングが集まっており、ひそかに人気が高まっている地域とのこと。日本からの進出もこのあたりに集中しているらしい。


街路が工事中だったが一応看が出ていた。

 同じようなつくりの店がならぶ商店街のようなところに立地していて、探さないとわからない。(本当に行ったのかと言われるくらいまったく景色の記憶が無い。・・ご容赦願いたい。)

 店に着くと、入り口はまるで隠れ家のようなたたずまい。店頭に置いてあるリーフレットには「都会の隠れ家」ということとかけて、「忍者の隠れ家」という店舗の由来を記す架空のストーリーが記載されてあり、テーマパークのパビリオンのように作られてある。
 ところで都会の隠れ家っていう表現はニューヨークでも通用するのだろうか。


隠れ家発見!



 マネージャーじきじきに応対していただき、恐縮しながら入店。入り口からすでに忍者(受付)がいて、「いらっしゃいませ」「こんばんわ」と日本語で迎えられ私も含め視察団一行になにやら安堵の空気が・・・。やっぱり日本語に触れると安心してしまう。

 エントランスは照明を落としてあり、入るとすぐにエレベーターに案内され、地下へ。薄暗いエレベーターでだんだんと世界観が作られていく。
 どうやら反対側が開くようになっていて、「なんだかディズニーランドを思い出しますね」という声の通り、エレベーターを降りたところで天井から忍者が! 
 
 
 ドサ!
 
 「イラッシャイマセ!」
 
 
 ・・・ありがちなパターンだな・・・。
 
 後から聞くところによると彼は新規の団体が来るとフロントの合図でつねに入り口の上部に張り付いているらしい。じっとエレベーターが下りてくるのを待っている姿はいじらしいだろうなあ。
 
 といいつついきなり洗礼を受けて約一名サイトウさんは失神しそうになっていて、一同大うけ。しらけずにすんだ。
 
 私はほとんど何が起きたかわからなかったが。
 
 
 その後リザーブされた個室へ通され、順番に店内ツアーへ。席は全部個室で20室(22室だったか)。全室だいたい6~8人押し込んでも余裕のある造りである。

 店の内装は本物感を出すことにこだわっており、壁(岩壁、石垣が模してある)など、内装のギミックなどは、ハリウッドの技術陣に依頼したらしく、精工にできている。遠目には本物の石かと。


 
個室の風景。ハリウッドか・・・。掃除が大変そうだな。

 パーティールームなど人数が集まる場所では、チーズケーキファクトリーでもこういった手法が用いられていたが、高低をうまく使った広がりのある空間が作られていた。

 ちらりと厨房を見せてもらったが、忍者(スタッフ)がちゃんと配膳したり、伝票見たりして刺身を切って盛り付けたりと、テーマパークのバックヤードを覗くような気分でむしろこのほうがドキドキした。
 
 「薄暗い店内」「個室」「家屋造り」という今では東京でどこでも見られる店のつくりだが、ここはやはり忍者屋敷である。

 店舗内は狭い廊下をめぐらせ、忍者(スタッフ)用の抜け道が各所に設けられていて、各所に忍者は音も無く配置される。実際に我々も通らせてもらったが、抜け穴そのもの。オープン当初は忍者(スタッフ)も時々迷っていたとか。
 
 基本的には1テーブルに一人、忍者(担当)が付き、呪文を唱えながら料理を出したり、手品を披露して来店客を非日常の世界へ徐々にいざなう。ここでも笑いがたえなかったが、スタッフのモチベーションは高い。


我々の担当をしていただいた「Yamabuki」さん。人気。



 さて苦手な料理紹介。

 料理はコースになっており、$60~$80(高いもので$150~$200のコースも)の価格帯から選択し、それぞれメインの魚・肉の種類を選ぶ。
 
 和食なので、なんとも批評のしにくい状況だが、まあ、客単価に応じた味。私はハマチのお作りを選択したのだが、どうでも良いがハマチのことをイエローテイルと呼ぶことをはじめて知った。


どの料理も盛り付けはすごく凝っている。左ははまち。右は「ISHIDATAMI」と名づけられたタコのゼリー寄せ。


ビーフかチキンがやはり付いてくる。まあ肉食ですしね。


とどめに寿司とデザート。もうこのころになるとやけになって食べています。

 コースの中で忍者(ウェイトレス)が調理してくれるものがあり、こちらはアジア風のスープに豚肉・香草を放り込み、熱く焼けた石をそのまま中に入れて熱する。

 忍者(ウェイトレス)がなにか奇声を上げて石を投入。

 
石を投入した後はさみで香草をじょきじょき。

 ジュー!という音と湧き上がる湯気で「おおー」という歓声があがる。
 
 まあだからなんだと・・・。


出来上がったスープ。アジア風の味付け。豚肉のうまみとコリアンダーの香りがマッチして良い。

 日本語がわかるスタッフは実は少ないのだが、みなさん「もてなす」という意識が浸透しているらしく、手品師の彼は頼みもしないのにアンコールにこたえて2回3回と我々の部屋へやってくる。
  


部屋に何度も訪れる忍者(手品師)。少々しつこい。


 和食+忍者ということで、テーマレストランとしてはストーリーを作りやすいのかもしれないが、「忍者が隠れ家で来客をもてなす」というよく考えたらそれだけでコントが成りたつようなばかばかしい設定の面白さは、アメリカのひとにはいまいちわかってもらえないのではないかとすっかりエンターテインメントの視点で余計な心配をしたりして。
 
 このあたりはNINJA AKASAKAでどのように表現されているか後日確かめたいと思う。



 あとから聞いたが、ニューヨークでは、市の条令だと思うが出店の際の行政的レギュレーションが非常に細かいらしい。新規出店の際は特に、各種公的機関の手続きなどで忙殺されているあいだに、工事は遅れに遅れて(実際は現場の人が難癖つけてなかなか働かないらしいが・・。)オープンが1~2ヶ月伸びるのはざらとか。

 あと、できれば積極的に取り入れてほしくないルール、これも条令だと思うが、どうやらタバコの吸殻が店の前の歩道に捨ててあると、店側が罰金を払わなければいけないらしい。

 本当はこのあたりのことが重要なインフォメーションなのだが、あまり積極的に聞き取れていないのが反省点である。また別の機会にスポットを当てられたらと思う。

 日本からの輸出ということがあるが、「NINJA NEW YORK」 についてはご存知の方も多いと思うが失敗の許されない状況で出店し、上記以外にも幾多の困難があったに違いない。この店について言えば、スタッフのモチベーションを持続させていることについて、注目すべきだろう。
 
 ちなみに今ではここの忍者になることが、地域の人たちの一種のステータスになっていて、忍者役の募集は順番待ちが出るほど応募が殺到するそうだ。

 私の好きなコメディアンが、「サービス精神とは、一緒に楽しもうとすることである」と断言していたが、はたして忍者たちは仕事も忘れる(いや手品が仕事ですが)くらい我々と一緒になって楽しんでいたように思える。




 私はいろいろな意味で「日本と似たような状況」を米国に見出したくて、この取材を強引に結び付けたかったのかもしれない。

 今回の取材で米国をほぼ初めて訪れ、ある誤解が解けたように思える。

 私自身は、日本における中食の台頭という現象と、高級ダイニングの活況をそのまま受け止め、経済格差の象徴のように思い込んでいたふしがあるが、日常と非日常の中間は要らないというものすごく単純な構造に結びたかったのだろう。

 この稿の第2回で、アメリカのひとは非日常というキーワードをすごく大事にしているというようなことを書いたが、ファミリーレストラン(米国での分類はコーヒーショップ)も、その昔は非日常(教会の帰りのお楽しみとかも含まれる)を演出する機能があったらしい。現在は生活シーンが変化し、そのような機能はある何かに取って代わられ、もはや「必要」では無い。
 
 ジェネレーションYというマーケット軸と同時に、ヒスパニックを中心とする移民集団が横断的に影響していることを考えると、ことはそんなに単純ではないが、米国の外食産業は確実に「変化に対応」している。またはしきれなくてもたまたま「個」を捉えた要素にマッチした企業だけが生き残っているのだろう。(結論を言えるほどの数を見てきたわけではないが。)
 
 ファストカジュアルであってもテーマレストランであっても、基本的には、外食することは「楽しい」ことなのだということが機軸になっており、この考えにブレがないように思える。

 うまく言えないが、楽しませること、新たな驚きを与えることに疲れたときに、その企業(店)の事情(たとえば効率化や拡大のひずみ)が入り込み、「なんかうまくいかない」という日がおとずれるのだろう。



 レポートを通じて、店舗自体の批評については中途半端だったかもしれない。しかしあえて、店舗のたとえば味やサービスについての批評が主旨ではないということを強く意識した。あらゆる意味でアナウンスの少ない日本において、海外の店舗の批評だけを私見で載せるのはフェアなやり方では無いと思ったからだ。

 帰国してから1ヶ月半の期間を要してこのレポートを仕上げたが、そのあいだにいろいろな方とお会いしてヒントをいただいた。

 短い期間の視察ではあったが、米国外食産業の潮流に触れさせてもらい、おおいに刺激になったが、革新的な記事になったかというと甚だ疑問である。
 
 写真の提供などにご協力いただいたOFSC研究会の方々、および今回の取材行のチャンスをくださった外食ドットビズ編集長の齋藤氏には深く御礼申し上げたい。
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福本 龍太郎
国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。

外食ドットビズパートナー・サッポロビール株式会社

外食ドットビズパートナー・OFSC研究会

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