
企業経営において、最も大切なことは、トップの考えがぶれないことである。つまり経営理念が明確になっていることである。
では、トリドールの経営理念はどうであろうか。
既述の通り、トリドールは、わずか8坪の小さな小さな焼鳥屋からはじまった。カウンター越しに焼きたての焼鳥をお客様に提供する形態の店であった。
お客様と会話をしながら、おいしいと思っていただける焼鳥をお出ししたい。つまり、“ カウンター越しにお客様とのコミュニケーションがあり、おいしい食事を提供する喜び ” それが、粟田社長の求めていたことであり、店舗経営における理念であった。
その後、郊外に3店舗ほど焼鳥屋を持つことになる。この段階で、起業時の目標は達成されることになるのだが、粟田社長は、他社とは違うコンセプトで出店を考えた。そして若い女性をターゲットにした洋風でお洒落な焼鳥屋を作ってみたところ、連日連夜若い女性客で溢れんばかりの大ヒット店となったのだ。
この当時、洋風でお洒落な焼鳥屋などほとんど無かった。粟田社長は、この成功でこの業態は行けると判断し、出店を加速し、一時的な成功を手中にすることができた。
しかし、結果的に女性をターゲットにした洋風焼鳥屋は失敗に終わった。何故か?競争のなかったローカルな市場に、女性をターゲットとした本格的なイタリアンレストランや奇抜な内容の創作料理店などの競合店が軒を連ねるようになり、これまで独占してきた市場が崩れていったのである。
では、何故それまでうまくいっていたのか?それは、子供連れのご家族や近所のご年配の方々といった地元のお客様に支えられ、そのお客様に対してちゃんとしたサービスを行ってきたからである。それに対し、流行に敏感な女性客にターゲットを絞り、全てのお客様に対して満足の行くサービスができていなかったのである。
“ より多くの地元の皆様に愛されるお店にしよう ”
その後の店舗展開における重要な理念は、この経験から学び取ったのである。
ここから、家族向けの焼鳥レストランとして、焼鳥ファミリーダイニング 「 とりどーる 」 を出店することになる。平成 11年3月から展開したこの 「 とりどーる 」 が好評になり、順調に事業を拡大することができ、トリドールが外食企業として確固たる地位を築くことになったのである。
そして、粟田社長は、トリドールの存在意義として 「 大衆性 」 「 普遍性 」 「 小商圏対応 」 と考え、“ ひとりでも多くのお客様に(大衆性)いつまでも愛され続ける(普遍性)地域一番店を創造(小商圏対応)していこう ” という経営理念を創ったのである。 “ カウンター越しにお客様とのコミュニケーションがあり、おいしい食事を提供する喜び ”
“ より多くの地元のお客様に愛される店にしよう ”
“ ひとりでも多くのお客様にいつまでも愛され続ける地域一番店を創造していこう ”
発する言葉は変っても、その根底に流れているのは、”お客様に愛される店であり続けたい”という一本の芯の通った考えである。
ここから、トリドールのトップの経営理念はぶれずに、明確になっていることがわかる。
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