
外食産業に限らず、接客のあらゆる場でホスピタリティの重要性が叫ばれている。一般的には 「 おもてなし 」 と和訳されるが、“ もてなすこと ” がビジネスにおいてどのような役割を果たすべきなのか、明確な考え方を示している企業の事例は少ないかもしれない。前回紹介したワンダーテーブルのフィロソフィー(企業哲学)のひとつである 「 ビジョン 」 は、“ 優れた商品・サービスとホスピタリティでお客様を魅了し、必ずリピートして頂く ” というものだ。働くスタッフが今やらなければいけないことを示しているのだが、ここに出てくるホスピタリティという言葉には、同社のこだわりともいえる考え方が込められているという。
【秋元氏】 「 ビジョン 」 の文章で大切なのは、「 ホスピタリティ 」 と 「 サービス 」 を分けて考えていることです。弊社では、以前からホスピタリティが大事と謳っていましたが、ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループと提携したこと(2007年3月に 「ユニオンスクエアトウキョウ」 をオープン)を契機に考え方を改めました。
ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループの創業者で、ホスピタリティの神様と呼ばれるダニー・マイヤー氏に講演をしてもらったり、店舗をオープンしてから一緒にミーティングや研修を受けるなかで、サービスとホスピタリティーは違うものだと教わりました。ホスピタリティを磨くことが大事ですが、それと同時に商品とサービスについても知識・技術をしっかりと磨かなければ、何の意味も成さないのです。
その考え方を踏まえ、フィロソフィーの 「 ビジョン 」 を視覚的に表現したのが 「 ビジョンピラミッド 」 です。ピラミッドを使って、スタッフへの 「 ビジョン 」 の浸透を図っています。ピラミッドを見ながら説明しますと、我々の仕事の目指すところはリピートしていただくことにありますが、ホスピタリティだけでリピートしてもらえるかといえば、そのようなピラミッドは成立するわけがありません。満足してもらえる商品とサービスがなければならないのです。
たとえば、ワインショップで働いている人が、高いホスピタリティ精神を持っていて、すばらしい笑顔でお客さまに好印象を与えたとしても、ワインの銘柄を全然知らなかったら絶対にリピートしてもらえませんよね。逆に、ソムリエ並みの技術と知識を持っていても、愛想が悪かったり、お客様の要望に合わない高額なワインばかりを勧めてしまってはリピートにならないわけです。ホスピタリティだけが特別に重要なのではなく、商品とサービスを合わせた3要素が揃ってはじめて、接客業でのリピート獲得につながっていくのです。
ワンダーテーブルが掲げる企業コンセプトは、簡潔な言葉でまとめられたフィロソフィー、印象的に可視化されたビジョンピラミッドなど、分かりやすいことも大きな特長となっている。これは、経営者側が考え方を作って終りというのではなく、理念を定着させることに重きを置いている証左となっている。理念を広げていく秘訣というのはあるのだろうか。
【秋元氏】 我々は本物の店を作ろうと思っています。単なるブランドやトレンドではなく、どれだけ本物の店をつくれるかを大事にしています。それには、社員の基本的なモチベーションが必要であり、モチベーションをつくるためには、理念の教育が大切になってくると考えています。いかに理念を定着させるかという問いの答えは、経営者側が諦めないことしかないと思います。
以前、携帯電話を媒介とするお客様アンケートを始めたときに、あるコンサル会社に 「 なかなかアンケートに答えてくれない、現場からも難しいという訴えがある 」 と相談したら、「 それは秋元さんの問題です 」 と指摘されたのです。単純にアンケートに答えてくれとお願いしても、お客さんには面倒なだけですからしたくありませんよね。「 しかし、それを変えていくのが上司の問題だ 」 というわけです。現場のスタッフが真剣にアンケートを取ろうと思っていないのは、店舗の支配人の責任であり、それはエリアマネージャーであるスーパーバイザーの問題であり、その原因は私にあるというわけです。何かやろうというなら、みんなで統一する必要がある。すべてそこに帰結するのです。全員が一緒に真剣に考えて、「 お食事中に申し訳ございませんが、この店をもっと良くしていきたいので、今日の感想を携帯電話でお願いします 」 とお願いすれば、応じてくれる方は増えるはずなのです。
理念を浸透させるのは経営者の問題です。経営者が理念にどれだけ真剣になれるか、それが経営幹部に伝わり、現場に伝わり、現場のスタッフが自分達のものにしたときに浸透するものだと思っています。
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